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それまで脇役である醤油を脇役として売ることばかり考えていたのでまったく視界が開けてこなかったのです。醤油を脇役の調味料として売ることは、大手メーカーから地方の零細企業に至るまでほとんどの会社がしのぎを削りながらやっていることでした。「醤油を主役にする」という発想は、いまだかつて誰も挑戦したことのない斬新な発想だったのだと思います。
とりあえず醤油を使って何ができるか、どこまでできるか、真に受けてやる実践でした。手持ちの武器は醤油しかない、しかもその醤油は脇役。ならばまずはお酒と同じポジションに持っていこう。お酒が飲んで美味しければすぐに買ってもらえるように、醤油も食べて美味しければ即その場で買ってもらえる形にしようと考えました。
お客様の美味しい食卓、楽しい食卓をお手伝いをする手段が今は醤油だけれども、美味しくしたり楽しくなるのですることができるのなら、必ずしも醤油にこだわる必要はなく、むしろ醤油という枠からどんどん外れていっても良いのだということに気付けた時、目の前に視界が大きく開けたような感じがしました。
だとすれば醤油製造業者の仕事は、「お客様が美味しい食卓、楽しい食卓を創りだすためにどんなお手伝いができるか。」
それは醤油よりももっと美味しい調味料が世の中に現れれば、お客様はためらわずそちらに代わるということでもあります。
食事が美味しくなるか楽しくなるのであれば、調味料は何だって良いのです。
お客様にとって調味料を使うことは食事を美味しくするためであって、こだわりの醤油を使うためではないということがすぐわかりました。
個別指導を頂いて、「醤油は主役じゃない」と言う一言が決定打となり、試行錯誤しながら考えておりました。
水は、傷つき疲れ、病に伏せったとき、私たち人間に元気をもたらすものであったはずです。元気、元の気に戻してくれるのが、水の役割なのです。からだに取り入れる水が、少なくとも、私たちのからだの状態よりは、活きのよいもの、元気なもの、すなわち気が高いものでなくてはならないはずです。
それはそのまま、私たちが昔、当然のように体験していた日常生活そのものです。主人公が気を失って息を吹き返すのは、草の葉のしずくが口元に落ちて、からだの中に入ったときです。うずく腕の傷を癒すのは森の泉です。